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《もっとリッチとリーンで30日》門間理良(もんまりら)氏の書評


門間ユキ子様

拝啓 
 母上におかれてはご健勝のことと拝察し、お慶び申し上げます。おかげさまで私は元気でやっております。昨秋は、私が防衛研究所の同僚と共同して執筆した『中国安全保障レポート2021 新時代における中国の軍事戦略』について、中国国防部報道官から「客観的でなく、無責任で専門的でない」という高い評価をいただきました。
 私の話はさておき、本日は残念なお知らせをしなければなりません。母上が抱かれていたご懸念が的中してしまいました。みかのやつが、またやらかしたのです。
 あやつは先日『ぱん工房くーぷ×オーヤマくん もっとリッチとリーンで30日』なる書籍を出版いたしました。「あの」本の2作目という位置づけであります。先日頼みもしないのに現物が着払いで送りつけられ、しぶしぶ目を通したのですが…、溜息しかでませんでした。前作と同じ過ちを繰り返しているのです。
 レシピ本にあるまじき主観丸出しの語りかけるような例の文体はもちろんのこと、体言止めの多用や「ガコン!からのスルン!」など意味不明の擬音、「ですます調」と「である調」の混在など、私のような論文執筆を生業とする者には頭がくらくらする、まさに信じられないような出来なのです。
 また、前作同様、全83頁のほとんど半分を写真でごまかしてページを稼いでおり、説明はごくごく短くなっています。簡潔と表現するならば聞こえは良いでしょうが、「レシピ本だと思って読むといろんなところが足りませんが、きっとあなたの創造力や経験が追加され混ざり合うことで、この本は完全なものになっていくでしょう」と記して、作者としての説明責任を放棄した挙句、読者に丸投げしているのです! さらに、文章の中には「コツは最初に『Y』をキメる」なる隠語を交えた不穏な一文もあり、何らかの法律に触れる疑いもあるのではと悪い汗が止まりません。
 しかも、この本が悪辣なところは「生地の作り方は『ほんのりしあわせ。おうちパン』(集英社)または『きょうも、パンを焼こう』(PHP研究所)をご覧ください」と臆面もなく宣言していることです。なんという抱き合わせ商法を展開しているのかと、唖然といたしました。
 兄としての監督不行き届きにつきましては甘んじて母上のお叱りを蒙る所存ですが、私もそれなりに妹を訓導したつもりでおりました。前回、みかが『ぱん工房くーぷ×オーヤマくん リッチとリーンで30日』を出版した際、拝み倒されて不承不承書評を書きましたが、パン作りを愛する方々が騙されて購入しないように誠心誠意学術的見地から徹底的に批判を加えることで、みかに正道に帰れと戒めたことは、母上もすでにご承知の通りであります。それにも関わらず、今回の事態…。私は無力感にさいなまれております。
 懲りないみかのことですから、この本が再び間違って売れでもしたら、次は調子に乗って『シン ぱん工房くーぷ×オーヤマくん』というタイトルをつけてみたり、「酵母の呼吸!壱の型!!」などと書いたりはしないかと今から思いやられます。
 母上のご心労はお察しいたしますが、どうぞ気を確かにもって日々をお過ごしくださいますよう。

敬具

  2021年6月22日


門間理良

【執筆者紹介】
門間 理良(もんま りら)
1965年、宮城県仙台市に生まれる。幼少の頃から乗用車名や怪獣名を多数暗記するというどこにでもいる利発な少年としてすくすくと育つ。浪人養成高校として著名な宮城県仙台第一高等学校を卒業し、計画通り2年浪人を経て立教大学探検部に入学。その間年子の妹に学年を追い越されるという怪現象に襲われる(おそらくは相対性理論で説明可能)。バブル景気真っ盛りの頃に中国天津市の南開大学に留学。現地には天津丼も天津甘栗も存在しないという事実を確認し帰国(学会未報告)。その後は就職活動を一切せず筑波大学大学院に進学。9時5時の勤務のサラリーマン生活を回避したい一心で勉学に励むも、結果は外務省(専門調査員として台北、北京勤務)、文部科学省(歴史教科書の検定)を経て防衛省に転職という国家公務員人生を邁進中。人生は思う通りにいかないことを学んだ。妹の本とコラボして(すがって)、自分の本を売れないか画策中。
趣味は空道(くうどう。総合格闘技)で現在2段。
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